仏(ほとけ)と言われる私のエッセイ

テーマはバラバラですが、ちょっとしたことを私なりに掘り下げて書いています。喜怒哀楽のある豊かな今後に向けて想いを綴りました。最初は音楽紹介から入りましたが、少しづつ変化してきたのでブログタイトルも変更します。

人と人をつなぐ技術

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今週のお題」には私個人ではなく、上司のことを記述するのが最適だと思った。

いつもながら感心するのだが、私の会社の上司は、人と人を繋ぐのが本当に得意だ。

 
彼は都内の有名デザイン会社のデザイナーさんと懇意で、先日もデザイナーさんを連れて地元の金沢を一生懸命案内していたのだが、その際のルートの中で、活版印刷を営んでいる個人の印刷会社を訪問した。活版印刷というのは、昔の印刷技術で、非常に手間がかかるので今は殆どやる業者さんがいない絶滅寸前の印刷方法だが、デザイナーさんや若い人の間では根強い人気がある印刷手法でもある。(下のリンクを除いていただければ、活版印刷についてどんなものか、その良さをわかりやすくまとめているので興味がある方は覗いてみてほしい。)

 
活版印刷を営む個人は、30代の若い女性で、活版印刷に魅了されて、廃業する業者から印刷機を譲り受け、金沢の市内で一人で活版印刷業を立ち上げたのだが、私の上司はその心意気に非常に感動していて、いつかそのデザイナーさんに、活版印刷とそれを一人で営む女性を紹介したいと兼ねてから私に話していた。今回新幹線の開通をきっかけに、デザイナーさんが金沢観光に来た際に、その業者を観光ルートの中に組み込んだのだ。
 
私自身はその現場に居合わせたわけではないので、訪問時のやりとりなどは分からないが、上司の話ではデザイナーさんも、活版印刷の女性もいたく喜んでくれたとだけ聴いていた。
 
本日当該デザイナーさんから私の上司のところにメールが来た。内容は、先日お邪魔した金沢の活版印刷さん向けにアルファベットや数字をデザインしたので、提案をしたいと思うがどう思うか?という内容だ。提案はきちんとデザイン提案の形に落としこまれていて、こんなデザインでこんなものを商品化し、こんな風に販売しらどうだろうか?というもの。そのデザイナーさんは連休を利用して想いを形にしてくれたというわけだ。
 
下世話な話になるが、客観的にみてこのデザイナーさんにこのようなデザイン提案を依頼したら数十万円は必要だろう。数万円ではまず無理だ。さらにいうとこれは私の上司やデザイナーさんの仕事とは関係のない部分での話だ。私の上司がコラボレーションを働きかけたわけでもない。あくまでデザイナーさんが、好意としてたった一人で活版印刷を営む同世代の女性に「自分ができること」を最大限に実行しているのだ。
 
私の上司としても、ここまでの事を想定していたわけではないと思う。彼としては、デザイナーさんの要望を満たしてくれるような活版印刷を紹介し、喜んでもらいたかったというのが一番の狙いだったと思う。それが大きく化けた。たった一人で活版印刷を行う女性に対して彼が感じた感動は、きちんとデザイナーさんに伝わっていて、それがボランティアな精神を育み、想いが形になったのだ。
 
私の好きな藤原和博氏の著書にこんな記述がある。(以下引用)
ただ、上手に人を紹介できる人間になりたいなあ。人の間と間を紡ぐこと。”間”の達人となること。それだけでも立派なソフト創りの仕事になる。”ネットワーク”などという軽い言葉では語りえない。”愛情”エネルギーがいる創造的な仕事として。
 
このゴールデンウィークに、金沢で活版印刷を一人で営む女性と、金沢出身の印刷会社の一営業マンと、東京の一人のデザイナーのそれぞれの想いが一つになり、小さな産声を上げたことは間違いなさそうだ。