仏(ほとけ)と言われる私のエッセイ

テーマはバラバラですが、ちょっとしたことを私なりに掘り下げて書いています。喜怒哀楽のある豊かな今後に向けて想いを綴りました。最初は音楽紹介から入りましたが、少しづつ変化してきたのでブログタイトルも変更します。

異物混入騒ぎの事後対応にみる過度な品質追求の限界

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本日、ローソンの冷凍食品から製造工場の天井の壁が混入していた件が、テレビやネット上の記事で取りざたされていた。少し前、焼きそばの中にゴキブリが混入していた件は記憶に新しく、同社の製品が再び市場に出るまでにかなりの時間がかかった。つい最近でもガストのかき氷の中にアルミ片が混入しており、ガストでは全店舗でかき氷の販売を休止している。

今回のローソンの異物混入の経緯や、対策について同社のウェブを覗いてみた。発覚したのは7月2日、混入物の特定や、原因究明、対策と、この間約2週間の同社と供給元工場のドタバタは容易に想像がつく。

混入していたのは製造工場の天井の壁材。供給元テーブルマークの工場では天井まで清掃するのかと思ったが、今回はこれが裏目に出た。詳細は記されていないが、おおかた清掃した際に少し削れた天井の壁材が製造ラインのどこか見えない部分に残っていて、ラインが稼働している際に振動か何かでたまたま食品の中に落ちたのだろう。こんなもの正直防ぎようがない。

これに対してローソンの対応は、勿論全品自主回収。異物混入の可能性があるロットのトータルは65000強。ローソンの店舗だけで販売しているものだから、公表された時点ではすでに店頭からの撤去を完了しているとのことだった。

再発防止策として、清掃後に設備の破損箇所等の確認強化やライン稼働前の異物チェック強化をあげているが、この辺の漠然とした表現を見ると、ローソンサイドとしても「こんなもの防ぎようもチェックのしようもない」と本音では考えていそうなことが推測できる。

さて、話は変わるが最近少しビジネス本の中で有名になった、元イギリス人アナリストのデーヴィッド・アトキンソンさんの本「イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る」という本を読んだ。大変面白い本で鋭い指摘に富んでいたが、その中で日本の生産性の悪さに言及した記述があった。

日本はGDP世界第三位の経済大国であることはよく知られた事実ではあるが、一人当たりの生産性のという点で見たGDPは2013年の世界銀行がまとめたデータではなんと世界25位という結果なのだ。GDPというものは人口に比例して大きくなるもので、人口が1億人以上の成熟国は日本とアメリカしかなく、これは至極自然な数字だ。大事なのは、実質1人あたりの生産性、つまり効率の良さという点だ。これはメディア等ではあまり言及されることはなく、知っている人はガクンと少なくなる。日本が技術大国、経済大国だと主張するのであれば、本来この数字もアメリカやドイツよりも高くないとおかしいのではないかというものだ。ちなみに同じ指標でアメリカは10位、ドイツは17位だ。

この生産性の悪さ、どこから来ているのか?色んな要素はあると思うが、行きすぎた品質追求も要因の一つだと直感的に感じている。上にあげたような異物混入は基本的にあってはならないと思うが、ただ、どうやってもゼロにはならないだろう。製造現場では思いもよらないことが常に起こっている。
ペヤングまるか食品などたった1件の異物混入で、大きな損害を被った。小さな会社ならひとたまりもない。あやまって口にしたところで健康に被害があるものでないなら、過敏に反応しなくても良い。

製造の現場では品質を追求するあまり、ロスが多すぎる傾向がある。私は印刷会社に勤めていて食品のパッケージを製造しているが、ほんの少しパッケージの印刷の色が違うだけでクレームがつく。印刷会社が負担して全数をやり直すこともしばしばだ。メーカーの原価計算に反映されない隠れたロスが多いのだ。これらは部品や資材を供給する業者が負担することになる。また、これらのロス品は、他に用途がないため、大量の産業廃棄物を生み出す。よってこの手のロスを減らすだけで、多大な付加価値が復活するのではないかと思ってしまう。

今回の件で、ローソンの事後対応は迅速かつ徹底されていた。ただ、本当に同じことを繰り返してはならないと考えるなら、最も大切なのは再発防止策のはずだ。その点において、ローソンの公表内容は、非常に漠然としていたと思う。根本的な具体策を構築できないからだ。

どこかの企業の過剰な品質追求によって、また、何かの不具合が起こった時のメディアの過剰な報道によって、どこかの真面目な企業が過度に疲弊していく現在の日本的な流通構造は、もう限界に来ているのかも知れないと感じさせる内容だった。