仏(ほとけ)と言われる私のエッセイ

テーマはバラバラですが、ちょっとしたことを私なりに掘り下げて書いています。喜怒哀楽のある豊かな今後に向けて想いを綴りました。最初は音楽紹介から入りましたが、少しづつ変化してきたのでブログタイトルも変更します。

営業マンの真髄 ー100点満点の受け答えー

今日の出来事の話だ。タイトルをいささか大げさにしてみたが、目上の人からの思いがけない投げかけに対して、いかに即答できるか、営業マンなら誰しも綺麗に即答したい場面というのはあるだろう。今日は私の直属の上司の即答が心に突き刺さったので、記録に残しておきたいと思う。

たった一言の説明になるが、この一言の重みを理解頂く為には十分に前置きしておく必要があるのでしばらく付き合ってもらいたいと思う。
うちの社長は一代で今の会社を築いてきた方だ。それなりの自負もあるし、本拠地の金沢では有数の企業ということもあり、個性の強い人物だ。自分で料理をするのが好きで、東京に来た時でも時間があれば自分で食事を作って私たちに振舞ってくれる。私も上司ももう40を過ぎていてたくさん食べたい年頃はとっくの昔に過ぎているものの、社長が腕をふるってくれるのだから多少無理をしても、美味しい、美味しいといって食べることに徹している。どちらかというと持ち上げられて嬉しいタイプで、自分が作った料理で部下が満足してくれることをこの上なく喜びにしていると思う。だから外に食べに行くよりは、会社の近くに契約しているマンションで食事をすることが多い。また、飲んでひたすら話をすることが好きで、19:00頃から始めて、終わりは0:00を回ることも多い。だから私も宿泊を迫られることが多く、それはそれで困っている。
一方私の上司は、かなり熱い人間で、人の気持ちを本当に考えているタイプの人間だ。気配りが素晴らしく、天性の営業センスがあり、わたし的には「人タラシ」ナンバー1の存在だと思っている。目上の人の事情や、部下の事情をよく把握していて、それらを踏まえた上で、みんなに配慮した発言ができるコミュニケーションに長けたタイプだ。
今日社長が上京することががわかっていた。社長が来るとなると、いつものようにマンションで社長の手料理を食べ、飲んで宿泊というパターンだ。今日社長は仙台にいて夕方頃新幹線で移動してくるらしかった。18:30に事務所に到着するという情報が入った。私と上司はめんどくさいなあといいながらも、きちんと対応するための心構えをしていた。
予定通り18:30頃に社長が到着すると私たちの仕事を気遣いながらも今日の夜の懇親会に気持ちが馳せていることは素肌感で感じられた。私たちも社長の待てない性格は理解しているので、18:30に照準を合わせて、社長がきたらすぐにでも帰れるように仕事を進めていた。
社長が事務所に到着し、しばらくネット等で仕事をした後で、今日の懇親会についてこう投げかけてきた。「今日はどうする?マンションでゆっくり食べるか、それとも外で食べるか?お前たちの好きなようにするぞ。」
社長としては、可愛い部下と一緒に食べて飲んで、マンションでゆっくり寝てほしいのだ。でも私と上司は昨日も四ツ谷で呑んだくれてマンションに泊まった経緯があるから、今日は早めに帰りたいのだ。特に私は家に毎日帰りたいタイプだから正直勘弁してほしい社長の上京だった。
さて、前置きが長くなったが、上記の社長の投げかけに対する私の上司の即答が以下の通りだ。そばで聞いていた私は
「さすが!」と心の中で感動した。「できれば社長の料理をいただきたいですけど、今日は仙台からの移動で社長もお疲れでしょうし、今日は外で頂ければ十分にです。」この一言には色んな意味が含まれている。私はその一つ一つが理解できたので、とっさにこれだけの意味を含んで即答できる能力をすごいなあと感じた。以下、簡単に紐解いていこう。
社長の料理を食べたいか食べたくないかは別として、社長が手料理を食べさせたいということを十分に認識しているから、まずは自分も食べたいんだということを明確に表現している。次に社長の今日の移動距離を把握していて、当然疲れているだろうと考る。そんな疲れた人に食事まで作ってもらうわけにはいかないと表現している。確かに疲労具合が見て取れた。
 
「今日は外で十分です」最も言いたいのはこの部分なのだ。上に記載した通り今日は泊まらず帰りたいからダラダラ長くなりたくない。マンションで飲んでいると、いつまで飲んでいても関係ないからどうしても長くなってしまう。だから外で飲む意味があるのだ。でも「外で飲みたいです」とストレートにいうとなんだか味気ないから、その前に少し付け加えをしているのだ。
もっと言うと、自分は最悪宿泊してもいいと思っているが、(私)だけでも早く返してあげたいという思いが込められている。うちの部長は私がどんなに遅くなっても家に帰りたいタイプだと知っているから、今日は帰らないといけないと思っている。外で食べれば店を出るタイミングで私だけでも「今日は帰ります!」と言い出しやすいということをとっさに考えているのだ。
この一言にはこれだけの配慮がある。この一言でみんなが幸せになれる。少なくとも私にはこれだけの配慮はできないと思う。少し大げさだが、この一言に「人タラシ」の真髄を垣間見たという気がしたのだ。
 
営業をやっていると即答の重要性を痛感する時がある。サラリーマンをやっていると即答できないことが多い。会社が大きくなればなるほど、組織も重層化し、自分の独断で即答できることなどたかが知れているだろう。そこに費用がかかる話ならなおさらだ。「持ち帰って検討します」が決まり文句の連続になってしまう。
 
だが、今の職場では殆ど持ち帰って検討しますという内容の回答はしない。勿論きちんと確認をとった上で正式に回答する必要がある場合はそうするが、スピード感と営業マンの「気概」を示す為にはその場で、且つ自分だけの判断で即答することで、ことをうまく運べる時も多い。
 
私も自分で開拓したお客様に対してはなるべく上司の判断を仰ぐことなく、その場の自分の判断で対応することが多い。お金がかかる場合でもそれは例外ではない。数十万円の利益が吹っ飛ぶような場合でも、その場で即決してすぐに対応を示す。自分の独断で判断で決定したことには責任が伴う。自分で勝手に決めたことだから自分が責任を持ってやり遂げなければならないからだ。
 
以上のような理由から即答は自分を磨く重要なアクションだと思う。今後もなるべく即答して責任を持ってアクションしたいと思う。
 
それにしても今日の上司の即答は見事だった。100点満点の即答だと思う。