仏(ほとけ)と言われる私のエッセイ

テーマはバラバラですが、ちょっとしたことを私なりに掘り下げて書いています。喜怒哀楽のある豊かな今後に向けて想いを綴りました。最初は音楽紹介から入りましたが、少しづつ変化してきたのでブログタイトルも変更します。

長男が空手の進級審査会を受けました

空手を習っている長男が、昨日白帯から脱却すべく進級のための審査会に参加したので保護者として参加した。参加したと言っても何もせず見ていただけが。会場は台東区隅田川沿いのスポーツセンター。丁度桜並木が素晴らしい場所で、朝の9:00前にはすでに花見に来た人で賑わっていた。

 
今回の審査会はいつもより多いらしく、下は5歳くらいの子から、上は50歳くらいまで幅広い世代が、それぞれ一つ上の階級を目指して参加していた。帯の色は白から始まり、紫→青→黄色→緑→茶色→黒という順番で進級していくらしい。飛び級というシステムが存在するかどうかはわからないが、ストレートで進級したとしても、6回は今回のような審査会に参加しないと黒帯にはなれないので、それなりに時間がかかるし、何より訓練が必要になる。
 
審査会の全てを見ていたので良くわかったが、準備体操に始まり突きや蹴りなど沢山の種類があり、覚えるだけでも大変そうだった。また、かなりの運動量なので好きな人以外はなかなか続くものでもないだろうと思った。40や50になって子供に混ざって同じことをやる大人の参加者が、人目もはばからず一生懸命こなしている姿には、素直に頭が下がる思いもした。
 
そんな空手の一通りを半日見ていて感じた事が2点ある。一つは、子供の体育の基礎がしっかりできるという点だ。空手の中に見られる動きは移動・付き・蹴りが主な要素だが、特に蹴りは左右共に片足で立つことを繰り返す為、体のバランス感覚を養い、体幹を強くする。現代のフィジカルサイエンスの分野では、この要素が非常に重要視されており、体幹を鍛える為のトレーニング本などは本屋に行けば嫌というほどある。小さいときからこの感覚を養っておけば、大きくなって別のスポーツをやる際にかなり応用が利く。また、色々な突きや蹴りを反復することで、体中の様々な間接を動かす。これによって間接の可動域を広げるということにも役立つ。勿論空手がバランス感覚や体幹の強化に良いという知識はあったが、実際にそれを目で見て、肌で感じて率直にその通りだと実感した。
 
さて、もう一つは心の強さを育むという点だ。特に子供には最適だと思う。始めるなら小学校の低学年程度が良さそうだ。道場で敵と相対峙し、相手に勝つには、まず相手に負けないという強い気持ちが重要になる。審査会では、最終的にはみんな防具を組手をする。実際に試合をするのだ。歳は関係ない。幼稚園で年長程度の子供が殴り合いをする。初めての体験でいきなり目の前の子に本気で殴られたり、蹴られたりして怖くて泣き出す子も何人かは出てくる。それでも周りの親や審判達は声をかけてくれるだけで試合は最後まで続行される。泣きながらでもまたファイティングポーズをとり、立ち向かわなければならない。逃げる場所はないのだ。
 
ある子供はいきなり殴られて泣き出し、3分程度試合は中断した。たまたまその子供の両親が私の隣で見ていたが、やはり我が子が立ちすくんでいるときにも、「頑張れ!頑張れ!」と声をかけるしかなかった。この子が何とか泣き止んで、またファイティングポーズをとり、弱々しい突きを出したとき、お父さんが「よし!」と大声で叫んだ。力強い掛け声だった。隣でその一部始終を見ていた私には、お父さんの気持ちが痛いほどわかった。私だってきっとそうなっただろう。このお父さんは、審査会を終えた息子に「良くパンチ出したなあ。」と子供の健闘を讃えたに違いない。
 
一方私の息子は小学校1年生だが、背が高く体重もあるので同じくらい身長体重のある2年生と戦った。息子もあれだけの人がいる公式な場所で戦うのは初めてで、組手が始まってすぐに顔面に突きを食らって怯み、その後は防戦一方になって先に3ポイントを取られた。「待て」がかかり、次に再開した時、息子は積極的に大技に出た。敵の顔面を蹴りに出たのだ。勿論一枚も二枚も上手の相手に動きを見切られてあっさりかわされ、その後すぐに返り討ちに合い、さらに3ポイントを取れらた。その次に再開した時も今度はもっと動きの大きい蹴りに出て、同じようにあっさりとかわされ結局1ポイントも取れずに敗戦した。
 
最初は勝負には勝って喜びと達成感を味わって欲しいと思っていた。だが、何度も殴られ、何度蹴られても、仕切りなおしたときには果敢に向かっていく我が息子の姿勢に心底感動し、勝ち負けなどどうでも良いと思えた。私の息子はどちらかというとおっとりとして気立ての優しいタイプなので、上に挙げた子供と同じように、やられたら怖くて手も出せない状況になるかもしれないと思う要素もあった。だから息子の予想に反した戦いぶりに本当に逞しくなったなあと、空手道場に感謝の気持ちでいっぱいになった。
 
今年下の子が5歳になり、道場に入れる年齢になる。下の子は兄貴の空手道場に最初からついていって見物しているので、5歳になったらすぐに自分もやりたいようだ。
毎日のように兄弟で殴りあっている。二人が審査会に臨む日が今から楽しみでならない。
 
【果敢に得意の上段回し蹴りで立ち向かう姿】
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